Case Study|Normal|CTO Advisory × AI

CTO退任直後のスタートアップで、
生成AIプロダクトを6ヶ月でリリースした話

業種:HR SaaS 規模:従業員 約35名 期間:6ヶ月(継続中)
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相談前の状況

人材マッチング領域でBtoB SaaSを展開するシリーズAのスタートアップ。顧客数は約200社、月間アクティブユーザーは数千名規模。開発チームは5名で、Ruby on Rails + Reactのモノリスアプリケーションを運用していました。

共同創業者でありCTOだった人物が家庭の事情で退任。技術的な意思決定者が突然いなくなり、CEOが代わりに開発チームのマネジメントを兼務する状態が3ヶ月ほど続いていました。

その間に、投資家から「生成AIを活用した新機能を出せないか」というプレッシャーが強まっていました。CEOは「AIが必要なのは分かるが、何から手を付ければいいか分からない。そもそも、うちのデータで何ができるのかすら判断できない」という状態でした。

分かっていなかったこと:自社のデータ資産で何がAI化できるのか、PoCと本番開発の違い、AIエンジニアを採用すべきかアウトソースすべきか。

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このケースが難しかった理由

難しかったのは、「AI導入」という技術課題と「CTO不在」という組織課題が同時に存在していたことです。

技術面では、既存のモノリスアプリに生成AI機能を載せられるのかという判断が必要でした。データの前処理パイプライン、モデルのホスティング、推論のレイテンシ管理——いずれも開発チームに経験がない領域です。

組織面では、「何を作るか」の優先順位を決められる人がいない。CEOはビジネス判断はできても、技術的な実現可能性とコストのバランスを評価できませんでした。開発チームは受け身になり、「言われたことを作る」モードに入っていました。

投資家向けの次回報告会まで4ヶ月。その時点で「AIで何ができたか」を見せる必要がある。時間の制約と技術の不確実性が同時に存在する、典型的なスタートアップの状況でした。

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open brain への相談

CEOの知人(別のスタートアップのCTO)からの紹介で、open brainに相談が入りました。最初のオンラインミーティングは1時間半。CEOと開発リーダーの2名が参加しました。

すぐに決めたことは、まず2週間の「技術診断フェーズ」を設けること。現状のコードベース、データ構造、インフラ構成を棚卸しし、「AIで何ができるか」の選択肢を3つ以内に絞る。この2週間は「何も作らない」と決めました。

あえて決めなかったことは、「どのLLMを使うか」「自社モデルを作るか外部APIか」というツール選定。データの棚卸しが終わるまで、ツールの議論は意味がないと判断しました。

「AIを入れたい」ではなく「何の課題をAIで解くか」から始める。当たり前に聞こえますが、プレッシャーの中でこの順番を守ることが最も重要でした。
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対応の流れ

Week 1-2技術診断・データ棚卸し
コードベースのレビュー、DBスキーマの分析、既存データの量と質の評価を実施。並行して、ユーザーの行動データから「AIが解決できる課題」を3つ特定しました。候補はレジュメ自動要約、マッチングスコアリング、面接フィードバック生成。
Week 3-4PoC設計・技術選定
3候補のうち「レジュメ自動要約」を最初のターゲットに選定。理由は、既存データで検証可能、ユーザーの導線に自然に組み込める、効果の計測がしやすい、の3点。OpenAI API + ファインチューニングなしのプロンプト設計で、1週間のPoCを設計しました。
Week 5-8PoC実施・評価
開発チーム2名と共同でPoCを実装。50件のレジュメで品質評価を実施し、人間が書いた要約との一致率を測定。結果は「十分実用的」と判断。同時に、コスト試算(API呼び出し回数 × 単価)とレイテンシ計測を実施し、本番投入時のSLAを定義しました。
Week 9-16本番開発・段階リリース
既存のRailsアプリにAPI連携レイヤーを追加。プロンプトの管理・バージョニング基盤を構築。まず社内利用 → 限定顧客βテスト → 全体リリースの3段階でロールアウト。週次で品質指標をモニタリングし、プロンプトを4回改善しました。
Week 17-24第2機能 + 技術組織の再設計
レジュメ要約の成功を受け、マッチングスコアリング機能の開発に着手。並行して、「CTO代行」から「技術チームが自走できる体制」への移行を設計。アーキテクチャ判断のフレームワーク、コードレビュー基準、技術的意思決定のプロセスを文書化し、開発リーダーへの引き継ぎを開始。
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重要だった判断ポイント

Decision 01
自社でモデルをファインチューニングするか、外部APIをそのまま使うか
開発チームにML経験者がいない状態で、ファインチューニングに手を出すのは「技術的には可能だが、運用が続かない」と判断しました。まずはプロンプトエンジニアリングだけで品質を担保できるか検証し、「運用できる範囲で始める」方針を取りました。結果として、ファインチューニングなしでも顧客満足度は十分なレベルに達しました。
Decision 02
3つの候補機能のうち、どれを最初に作るか
マッチングスコアリングの方が事業インパクトは大きいと見積もりましたが、データの前処理と評価指標の設計に時間がかかることが分かりました。投資家報告までの4ヶ月で「動くものを見せる」ことを優先し、より短期間で形にできるレジュメ要約を選択。「小さく成功して、チームの自信をつける」ことを重視しました。
Decision 03
CTO代行の「終わり方」をどう設計するか
依存関係を作らないことを初期段階から意識していました。Week 17以降、意思決定の根拠とプロセスを文書化し、開発リーダーが同じ判断を再現できる状態を作ることに注力。「open brainがいなくても回る」がゴールであり、そこに近づいているかを毎月レビューしました。
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提供した成果物

技術診断レポート(コードベース・データ資産・インフラ評価)
AI機能候補の評価マトリクス(3案比較)
PoC設計書・結果報告書
投資家向け技術説明資料
プロンプト管理・バージョニング基盤
AI機能の品質モニタリングダッシュボード
アーキテクチャ判断フレームワーク
技術的意思決定プロセスの文書(引き継ぎ用)
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結果と変化

Technical
レジュメ自動要約機能を6ヶ月でリリース。月間数千件の処理を安定稼働。API費用は月額数万円に抑制。マッチングスコアリング機能も開発中で、βテスト開始済み。
Business
投資家報告会で「AIの実装」を実績として提示。シリーズBの資金調達に向けたポジティブな材料となりました。また、レジュメ要約機能の導入をきっかけに、複数の大手顧客からのアップセル商談が生まれました。
Mindset
CEOの最も大きな変化は、「AIの話ができるようになった」ことでした。技術の詳細は分からなくても、「何が可能で、何にコストがかかるか」の感覚が身についた。開発チームも、「言われたことを作る」から「技術的な提案を自分からする」に変わり始めました。
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この事例から言えること

CTO代行において最も重要なのは、「技術を持ち込む」ことではなく、「技術の意思決定ができる状態をつくる」ことです。AIに限らず、技術選定の多くは「唯一の正解」が存在しません。大切なのは、「なぜこれを選んだか」「何を捨てたか」の判断根拠を、チーム全体で共有できていることです。

open brain が大切にしているのは、最初から「自走できるゴール」を設定すること。外部パートナーへの依存ではなく、技術組織が自分たちの判断で前に進めるようになることが、伴走支援の成果だと考えています。

また、AI導入においては「PoCで終わる」ケースが非常に多い。その原因の大半は、PoCの段階で運用コスト・品質指標・段階的リリース計画を設計していないことにあります。「作る前に、運用の姿を決める」。これがPoCを本番につなげるための原則です。

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同じ状況の方へ

「AIを導入したいが、何から始めればいいか分からない」——この状態は、決して出遅れではありません。むしろ、手当たり次第にPoCを始めるよりも、まず「何を解くか」を整理するほうが、結果として速く成果にたどり着きます。

CTOが不在でも、技術顧問がいなくても、現在のチームの状態に合った進め方を一緒に設計できます。

NDA対応可。まずは状況のヒアリングから始めましょう。

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