人材マッチング領域でBtoB SaaSを展開するシリーズAのスタートアップ。顧客数は約200社、月間アクティブユーザーは数千名規模。開発チームは5名で、Ruby on Rails + Reactのモノリスアプリケーションを運用していました。
共同創業者でありCTOだった人物が家庭の事情で退任。技術的な意思決定者が突然いなくなり、CEOが代わりに開発チームのマネジメントを兼務する状態が3ヶ月ほど続いていました。
その間に、投資家から「生成AIを活用した新機能を出せないか」というプレッシャーが強まっていました。CEOは「AIが必要なのは分かるが、何から手を付ければいいか分からない。そもそも、うちのデータで何ができるのかすら判断できない」という状態でした。
分かっていなかったこと:自社のデータ資産で何がAI化できるのか、PoCと本番開発の違い、AIエンジニアを採用すべきかアウトソースすべきか。
難しかったのは、「AI導入」という技術課題と「CTO不在」という組織課題が同時に存在していたことです。
技術面では、既存のモノリスアプリに生成AI機能を載せられるのかという判断が必要でした。データの前処理パイプライン、モデルのホスティング、推論のレイテンシ管理——いずれも開発チームに経験がない領域です。
組織面では、「何を作るか」の優先順位を決められる人がいない。CEOはビジネス判断はできても、技術的な実現可能性とコストのバランスを評価できませんでした。開発チームは受け身になり、「言われたことを作る」モードに入っていました。
投資家向けの次回報告会まで4ヶ月。その時点で「AIで何ができたか」を見せる必要がある。時間の制約と技術の不確実性が同時に存在する、典型的なスタートアップの状況でした。
CEOの知人(別のスタートアップのCTO)からの紹介で、open brainに相談が入りました。最初のオンラインミーティングは1時間半。CEOと開発リーダーの2名が参加しました。
すぐに決めたことは、まず2週間の「技術診断フェーズ」を設けること。現状のコードベース、データ構造、インフラ構成を棚卸しし、「AIで何ができるか」の選択肢を3つ以内に絞る。この2週間は「何も作らない」と決めました。
あえて決めなかったことは、「どのLLMを使うか」「自社モデルを作るか外部APIか」というツール選定。データの棚卸しが終わるまで、ツールの議論は意味がないと判断しました。
CTO代行において最も重要なのは、「技術を持ち込む」ことではなく、「技術の意思決定ができる状態をつくる」ことです。AIに限らず、技術選定の多くは「唯一の正解」が存在しません。大切なのは、「なぜこれを選んだか」「何を捨てたか」の判断根拠を、チーム全体で共有できていることです。
open brain が大切にしているのは、最初から「自走できるゴール」を設定すること。外部パートナーへの依存ではなく、技術組織が自分たちの判断で前に進めるようになることが、伴走支援の成果だと考えています。
また、AI導入においては「PoCで終わる」ケースが非常に多い。その原因の大半は、PoCの段階で運用コスト・品質指標・段階的リリース計画を設計していないことにあります。「作る前に、運用の姿を決める」。これがPoCを本番につなげるための原則です。
「AIを導入したいが、何から始めればいいか分からない」——この状態は、決して出遅れではありません。むしろ、手当たり次第にPoCを始めるよりも、まず「何を解くか」を整理するほうが、結果として速く成果にたどり着きます。
CTOが不在でも、技術顧問がいなくても、現在のチームの状態に合った進め方を一緒に設計できます。
NDA対応可。まずは状況のヒアリングから始めましょう。